一度離れた常連は、なぜ戻らないのか
こんばんは。ここ最近、自分の店の前を、目を合わせないように通り過ぎていく常連さんの背中を見て、勝手にしょんぼりしている吉田です。
今日は、ちょっと反省まじりの話を書いてみたいと思います。飲食店をやっている方や、これから2店舗目を考えている方に読んでもらえたら嬉しいです。
僕はデュッセルドルフで、丼とカフェの店を2つやっています。1つ目がRaum、2つ目がCobeya。この2つ目を開けるために、人手がまったく足りなくて、1つ目のRaumを3ヶ月間も閉める羽目になってしまったわけです。2人で回していた店が、いきなり2店舗になったんだから、まあ当たり前ですよね。
で、3ヶ月ぶりにRaumを開けたとき、正直どこかで甘く見ていました。いいものを出してればまた来てくれるだろう、と。長いことそう信じてきたんです。ところが、常連さんの半分くらいが、記憶から綺麗さっぱり消え失せたのか、まったく来なくなってしまったわけです。
たまに戻ってきてくれた方には「営業時間もわからないし、行っても閉まってたから、また来ようと思ったときに閉まってたら怖いなと思って来づらくなったよね」と言われる始末です。いや、言葉になりません(笑)
ここで不思議だったんですよね。ご飯なんて毎日食べるものです。毎日外食する人は少ないにしても、週に1回か2回はする人が多いはずです。それだけ戻るきっかけはあるのに、なんで一度離れたら、ぱったり来なくなってしまうのか。
考えていて、ふと美容室のことを思い出しました。ずっと通っていた美容室でも、何かのきっかけで一度別の店に変えると、元の店にはもう行きづらくなる。別に悪いことなんてされてないのに、なんとなく顔を出しづらい。あの感覚です。
でも、美容室と外食は違うよなとも思ったんです。美容室なんて月に1回、多くても数週に1回の話です。行くか行かないかを選ぶ機会も、そう多くない。一方で外食は、週に何度もチャンスがある。戻れる回数がぜんぜん違うわけです。なのに、戻らない。
そこで、あー、と思ったんです。これ、回数の問題じゃないな、と。習慣が切れたかどうかの問題なんだな、と。
人が店に通うのって、毎回そのお店の味を天秤にかけて選んでるわけじゃないんですよね。ただの習慣なんです。この曜日のこの時間に、あの店に寄る。体に染みついたその流れがあるから、また来る。それが3ヶ月も閉まっていれば、流れはあっさり切れます。そして一度切れた流れは、店を開け直したくらいじゃ、自然には戻ってこない。お客さんの毎日の中に、僕の店の居場所がもうなくなっちゃってるんです。
これはもう、待っていても解決しないやつです。そのうち思い出して来てくれるだろう、は起きません。習慣っていうのは、店の側からもう一度作りにいくものなんだと思います。今日ここに来る理由を、こっちから差し出す。季節の丼だったり、その日だけの一品だったり、また覗きたくなる小さなきっかけだったり。そういうのを地道に積み重ねて、生活の中にもう一度、居場所を作り直していくしかない。
ちなみに、値下げやクーポンには手を出しません。安さで来てくれた人は、安さが終われば消えます。安売りで埋めた席は、習慣には変わらないんですよね。そうじゃなくて、また来たいと思ってもらえる理由を、こつこつ置いていくだけです。
Raumの夜営業を復活させると決めたのも、この流れの中ででした。売り上げの7割か8割は、昔から昼の数時間に集中していて、数字だけ見たら夜は割に合いません。それでも開けるのは、店が開いている時間が長いほど、お客さんが今日行こうかなと思える窓口が増えるからです。切れた習慣を作り直すには、まず扉が開いてないと話にならないですからね。
正直に言うと、Cobeyaのために既存店を止めた判断は、代償がデカかったです。もう一度あの場面に戻れるなら、たとえ休むにしても、常連さんの来店習慣だけは切らさない方法を必死で探すと思います。店の一番の資産は、立地でも内装でもなくて、通ってくれる人の習慣なんだと、失ってからようやく思い知りました。
目を伏せて通り過ぎていくあの背中に、もう一度振り向いてもらう。簡単じゃないですけど、そのための地道な仕事を、これから一つずつやっていきます。
厨房からは、以上でーす!!
