出店したエリアに合った価格帯。5年前の失敗と、いま2店舗でやっていること
こんにちは。5年前の自分の記事に「もうイケイケです」と書いてあるのを見つけてしまった吉田です(笑)
今日はその記事を、今の目線で書き直してみます。テーマは値段の付け方。特に、どのエリアに店を出すかで値段はどう変わるのか、という話です。これから海外で店を出す方に読んでもらえたら嬉しいです。
2021年、15ユーロのお弁当が売れなかった
当時やっていたRowanは、ロックダウンでテイクアウトしかできない時期でした。
そこで僕らは、15ユーロから20ユーロのお弁当で勝負していました。自分たちのエリアには少し高いと分かっていたんですが、この弁当には15ユーロ以上の価値がある、意地でも安売り競争には参加しない、と。完全にイケイケです。
ところが1月から3月にかけて、売上はずっと低空飛行。国の補助金があっても、さすがに限界が見えてきました。
考えに考えて出た結論は、やっぱり値段でした。
ただ、同じお弁当を値下げしたわけではありません。売り方ごと変えたんです。注文を受けてから作るのをやめて作り置きにし、しっかり冷ましてから盛り付けて、来たらすぐ持って帰れるボウルにする。中身も9.8ユーロに見合う形に作り直しました。
変わったのは、売上より客層だった
一番驚いたのは、来るお客さんが変わったことです。
道で何度もすれ違って、挨拶する仲にまでなっていたのに、一度も買いに来てくれなかったご近所さんが来てくれた。近くに住んでいたけど入りづらかったという日本人のお客さんも来るようになった。
もちろん楽にはなりません。お弁当2つで30ユーロを超えていたのが20ユーロくらいになるので、数を売らないと売上は立たない。それでも、今まで素通りされていた人たちに初めて届いた手応えは大きかったです。
ここで気づいたのは、値段は「高いか安いか」より先に、「そのエリアの人の選択肢に入るかどうか」を決めている、ということでした。15ユーロのお弁当は、あの通りの住人にとって、比べる候補にすら入っていなかったわけです。
日本人として日本食レストランで長く働いていると、自分たちの料理の値段に慣れすぎて、ここに気づけないんですよね。僕がまさにそうでした。
「それって結局、安売りでしょ?」と思われるかもしれません。でも値引きは、同じものを安く出すことです。僕らがやったのは、そのエリアで選ばれる形に商品ごと作り直すこと。似ているようで、やっていることは全然違うと思っています。
いま、同じ丼を2つの店で違う値段にしている
当時の記事では、普通に営業できればロックダウン中に限った話かも、と書いていました。今なら、そうじゃないと言えます。
今はデュッセルドルフで2店舗やっています。Münsterstraßeにある丼とカフェのRaumと、日本人街のImmermannstraßeにあるCobeya。Cobeyaの家賃は、Raumのだいたい4倍です。
だから同じメニューでも、値段をわざと変えています。
- 海鮮丼 Raum 15.50ユーロ / Cobeya 15.9ユーロ
- ローストビーフ丼 Raum 13.90ユーロ / Cobeya 14.9ユーロ
- 麻婆豆腐丼 Raum 13.50ユーロ / Cobeya 14.6ユーロ
差は40セントから1ユーロちょっと。家賃も、店の前を歩いている人も、昼と夜の人の流れも違う場所で、同じ値段にそろえる理由はないと思っています。
店を出す前に見ておくこと
5年前の自分に言いたいのは、「いいものを出せば、どこでも客は来る」は半分しか本当じゃない、ということです。いいものは必要。でもそれだけでは足りない。高い料理を食べに来る人が集まるエリアは、確かにあるんです。
なので次に店を出すなら、料理を決める前にこの3つを見ます。
- 周りの家賃の相場
- 近くの競合店の価格帯
- 昼と夜、それぞれどんな人がどれくらい歩いているか
この3つで、そのエリアの「選択肢に入る値段」がだいたい見えてきます。そこから逆算して、その値段で出せる一番いいものを作る。順番を逆にすると、5年前の僕みたいに、自信作のお弁当を抱えたまま、誰にも比べてもらえない冬を過ごすことになります。
それでは厨房からは以上でーす!!
